症例は雑種猫、去勢オス、保護猫のため年齢不明、体重4.7kg。 食欲不振を主訴に当病院に来院しました(第1病日)。
第1病日
血液検査では尿素窒素、クレアチニンの著しい上昇が認められました。 X線検査、超音波検査では異常は認められませんでした。尿検査で低比重(1.016)が認められ、以前から尿は薄かったとの稟告があったため慢性腎臓病の急性増悪を疑いました。 この日から入院下で点滴治療を開始しました。
静脈から点滴を行っていましたが、排尿は認められているにもかかわらず、日に日にクレアチニンは上昇していきました。また点滴により体重の増加が認められ、第7病日には症例2と同様に胸水の貯留が認められました。
第7病日
腎機能が低下している時に過剰に点滴を入れると、水の排出が間に合わず体腔に漏れ出てしまいます。胸腔に水がたまったものを胸水と呼び、肺の拡張を障害するため呼吸が苦しくなります。(症例2参照) この症例は呼吸状態が悪化したためレントゲンを撮影すると上の画像のように肺が全体的に白くなっており、超音波で確認すると胸水が貯留していました。この状態になるとこれ以上の点滴は逆に命取りとなります。
第8病日
第8病日の血液検査になります。過剰水和になり点滴もこれ以上できない状況で腎数値は上昇し続けていました。症例も体力的にかなり消耗しており、危険な状況でした。ここで飼い主様は血液透析治療を受けることを決意しました。
血液透析は計6回行われました。6回目の血液透析後は腎数値は依然高値でしたが、横ばいを維持していたため第42病日に透析カテーテルを抜去しました。その後1年間皮下点滴通院を行いましが、現在では皮下点滴も離脱して腎療法食のみで経過観察となっています。
第1071病日
上の数値は血液透析を離脱して3年後の血液検査結果になります。透析離脱後よりも腎数値は低くなっていて、本人もいたって元気に過ごしています。急性腎障害によりダメージを受けた腎臓は完全に元通りとは行かないまでも、数ヶ月から数年かけてその機能を回復させていきます。
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