症例は柴犬、未避妊メス、1歳11ヶ月、体重4.5kgで食欲不振および水様性下痢を主訴に紹介元病院を来院しました(第1病日)。各種検査で明らかな以上は認められず、胃腸炎として入院下で治療行っていたのですが、3日目から尿が出なくなり、腎数値の上昇が見られたため、その日のうちに当院に紹介がありました。
第3病日
血液検査は当院来院時のものです。 尿素窒素、クレアチニンの上昇が認められました。また、カリウムの著しい上昇が認められました。 カリウムは食事中から摂取するミネラル成分で、腎臓から体の外に排出します。急性腎障害で尿が出ない状態になるとカリウムは体の中に蓄積していきます。カリウムは心臓正常な働きを担っているのですが、8.5mEq/L以上に上昇した場合いつ心停止してもおかしくありません。 この症例は頸部に透析用カテーテルを挿入するための麻酔の際に高カリウム血症により3回心停止しましたが、心臓マッサージを行い、いずれも自己心拍の再開が認められました。
すぐさまカリウムを下げないとまたいつ心停止するかわからない状況でした。 カテーテルを設置後すぐに血液透析を行いました。カリウムは数日かけて正常値まで減少していきました。
この症例は計7回の血液透析を行いました。第16病日を境に血液透析を行わずとも腎数値が減少していき、血液透析を離脱しました。
第762病日
これは血液透析を離脱して約2年後の血液検査になります。尿素窒素、クレアチニンは正常範囲内にまで低下しており、食事療法のみで維持管理できる状態まで回復しました。 急性腎障害によりダメージを受けた腎臓は完全に元通りとは行かないまでも、数ヶ月から数年かけてその機能を回復させていきます。
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